「ジェネリック医薬品を推す薬局さんの大変さ」を語る 第2回:"粗悪"なジェネリックとは?
今日もお疲れ様です。前回に引き続き、ジェネリック医薬品と薬局さんを取り巻く環境について、書いていきます。今回はジェネリック医薬品の価格設定にフォーカスしていきます。
前回の記事も、もしよければご覧ください。
(目安:2分)
【目次】
開発について
先発医薬品との違い
よく、医薬品の開発費用は1000億円以上かかり、開発期間も10年20年かかる、なんていう話もありますが、それはもちろん全く新しい薬剤を開発する場合です。有効成分に、市場に投入するに足るポテンシャルがあるかどうか、適切な投与量はどうか、安全性はどうかなど、細かく細かくチェックしていく必要があります。
一方でジェネリック医薬品の場合は、「すでに有効性が証明されている有効成分」と「その用法用量」などが分かっている状態で、その有効成分を含んだ薬剤を開発し、生物学的同等性試験をパスすることによって発売が可能な薬剤です。当然、開発に関わる費用を大きく抑えられるので、先発医薬品よりも安い薬価であっても利益が取れるのです。
生物学的同等性試験
では、生物学的同等性試験とはどのような試験なのでしょうか。一言で言ってしまえば、
「先発医薬品と、ほぼ同じような血中濃度の推移が確認できるかどうか」という試験です。
飲み薬にしても注射剤にしても、血液中に薬効成分を乗せて、作用部位に到達させる必要があります。つまり、血液中の濃度が高ければ作用を表す可能性が高くなるということですね。
ジェネリック医薬品の場合は、この血中濃度の推移が先発医薬品と同じような動きをするかどうかが承認の条件になります。
新剤形
ジェネリック医薬品として、他の製品との差異化を図っていく必要があります。それもそうですよね。医薬品の特許が切れる日はあらかじめ分かっていて、一斉に同じ有効成分のジェネリック医薬品が発売されるわけですから、その中でも医療スタッフや患者さんによりメリットのあるものがいいはずです。最近では、普通錠しかなかった先発医薬品にOD錠や苦み軽減加工を施したりして、患者満足度を高める工夫もされていますよね。
一般的に、こういった剤型の加工技術については、先発医薬品メーカーよりもジェネリック医薬品メーカーの方が優れているとも言われています。
薄利多売のリーンビジネスだとしても、こういった工夫のために投資する姿勢は、素晴らしいと思います。
添加物やデバイス
ジェネリック医薬品メーカーMRの重点活動先
僕は先発医薬品メーカーのMRとして働いていますので、主な得意先は処方権のある医師ということになります。一方で、ジェネリック医薬品メーカーMRの主な得意先は調剤薬局であることが多いんですね。
クリニックで薬を処方してもらったときは、一般的に近くの調剤薬局で薬を受け取ることが多いと思います。処方箋をご覧になる方はご存知の方も多いと思いますが、薬剤名のところ、変更不可にチェックが入っているケースがあります。これは処方元医師の判断で「この薬は先発で出してほしい」という場合に、調剤薬局でジェネリック医薬品に変更されないようにする指示です。
裏を返すと、ここにチェックがついていないものや、薬剤名が一般名で記載されている場合は、調剤薬局の判断によって好きなジェネリック医薬品に変更することが可能です。
調剤薬局も物理的な在庫スペースの問題がありますので、薬を何でもかんでも置いておくということは出来ませんよね。そうなると、数少ないジェネリック医薬品の採用枠をかけて、多くのメーカーが椅子取りゲームのように取り合うわけです。
例えば先発医薬品単品での売り上げが年間1,000億円を超えるような大型製品の場合ですと、ジェネリック医薬品メーカーの売り方もそりゃもうすごいですよ。あの手この手で納入工作をかけています。特にその値引き率がすごいですね。5割引き6割引きもザラで、最初は赤字大出血だったとしても、納入枠さえ取れてしまえばそのあとは恒常的な収益が見込めますので、ド派手にやってきます。
本当に効いているの?
上の章で、生物学的同等性試験をパスすればOKというようなお話を書かせていただきました。ただ医薬品の難しいところが、「血中濃度がほぼ一緒なら、効果もほぼ一緒と言えるか」というと、そうでもないんですよね。「血中にあるから効く」のではなくて、「血中に乗った薬が、その後作用点となる臓器にしっかりと分布して、受容体なら受容体に結合して」初めて効果を表します。「成分が一緒で血中濃度が一緒なら、そりゃあ効くに決まってる」というロジックも分かるのですが、結局のところ本当に先発医薬品と同じように臓器へ移行しているかどうかは見ていないので、「分からない」というところになるかと思います。
それ以外にも添加物の問題もありますね。添加物まで同一にしなければならないという決まりはありませんので、ジェネリック医薬品メーカーはある程度好きなものを使うことが出来ます。ここで問題になるのが、添加物に対するアレルギーなどの副作用ですね。
先発医薬品であれば、安全性の試験もしっかり行っているので、アレルギーがあったとしてもある程度予知できます。
一方でジェネリック医薬品については安全性の試験を実施しなくてもよいので、添加物によるアレルギーなどが予知できません。
「なんか体調がおかしいんだけど?」と訴える患者さんもいるとお聞きしますが、添加物による影響も考えなければならない、ということですね。
現場で本当によく耳にする"粗悪"なジェネリック
僕も時々薬局さんにお伺いして、いろいろなお話を聞かせていただくことがあります。錠剤での話はあまり聞きませんが、よくある"粗悪"なジェネリックの不満(?)として、張り薬のお悩みを聞くことがあります。
「転んで少し痛めてしまった」ときなんかは、今は整形外科や一般内科でもすぐ痛み止めの張り薬を貰えますよね。僕も中学高校の時はよくお世話になっていました。
薬局さんから言われる不満が
「テープのフィルムとかけばけばの方が、チープ」
という内容です。来局される患者さんからそういったお声が多いんでしょうね。
「いや、少しチープなくらいなら問題無いんじゃないの?」とも思いました。
しかし、一番困るのはテープを張る時なんだそうです。
「フィルムが上手く剥がせなくて、力を入れて引っ張ったら、テープ同士がくっついてしまった。」
こういうお悩みが多いんだそう。
いわゆる基材の部分もジェネリックメーカーの好きなものを使えます。
リーンビジネスの難しいところと思いますが、こういった経費削減が必ずしも患者さんのメリットになるかというと、難しいところはありますよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
国策として取り組んでいるジェネリック医薬品ですが、利益を上げるべく抑えられる経費の部分をどのように抑えているのか、また現場で耳にするちょっと残念なジェネリック医薬品のお話をさせていただきました。もちろん、モノのいいジェネリック医薬品もありますが、クオリティはピンキリですよね。ジェネリック医薬品の使用推進を国にも上司にも(?)言われている薬局薬剤師さんにとって、クオリティがそこまで高くないジェネリックをもおすすめしなければならないというのは、少し大変だなあなんて思うところです。次回は、今回の小林化工問題・日医工問題を受けて、薬局さん方がどのような苦労をされているのかを、僕なりに考察してみようと思っています。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました!