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保険適応の禁煙アプリ「CureApp SC卒煙」そのエビデンスを読み解く!

禁煙アプリ

2020年11月、厚生労働省は禁煙治療用アプリケーション「CureApp SCニコチン依存症治療アプリ」を保険承認しました。治療用アプリケーションが保険承認されるのは、日本で初めてとなります。今回は、このアプリケーションについて、承認につながったエビデンスを読み解いていきます。

 

記事の概要
  • 禁煙治療用プログラムの特徴、課題、エビデンス
  • CureAppを用いた場合の診療報酬

 

アプリとプログラム

本稿で触れるアプリは、株式会社CureApp(本社:東京都)が開発した禁煙継続をサポートするものです。禁煙治療として、このアプリケーションを活用した「ascure卒煙プログラム」が注目されています。

 

禁煙治療はアプリのみで行われるのではなく、既存の禁煙補助薬(バレニクリン、ニコチンパッチなど)を併用します。また、アプリを通して専門資格を持つ指導員による定期的な面談でフォローされます。

 

従来の禁煙外来では、定期的に通院しなければならず、継続の妨げにつながっているという課題がありました。このプログラムでは、面談はもちろんオンラインですし、禁煙補助薬は配送されてくるため、治療がすべてオンラインで完結するという特徴があります。

 

エビデンス

このプログラムの効果を検証した論文が、JMIR mHealth and uHealth*1に掲載されています。*2

 禁煙治療継続率とプログラムサポート継続率を、24週間にわたって評価しています。被験者は2017年~2018年に登録された成人喫煙者177人で、背景は以下の通りです。

被験者の主な背景
  • 平均年齢:44.6 歳
  • 女性の割合:36.7 %
  • ブリンクマン指数:362
  • 1日あたり喫煙本数:16.2 本
  • 喫煙歴:22 年

 蛇足ですが、ブリンクマン指数は「1日あたり喫煙本数 × 喫煙歴」で算出でき、400を超えると肺がんのリスクが高まると言われています。

 

20年以上のスモーカーも多く、「やめたいけどやめられない…。」という方が大部分を占めていると考えられます

 

被験者は、24週間の間に計6回の面談を実施します。また、1~3分間のチュートリアル動画が全24個送付され、被験者の治療継続をサポートしてくれます。その他、電子日記には禁煙状況や身体状況、好ましくないイベントを記載し、報告します。

 

どのような背景やサポートによって、禁煙継続率が高く維持できたか、という切り口で解析を行っています。

結果(オッズ比)
  • 行動パターンを変えた時間が長いこと:約 3.2 倍
  • 日記の記入数が多いこと:約 2.7 倍
  • 代替となる習慣を作ったこと:約 2.5 倍
  • (吸いたくなるような)環境要因を避けた時間が長いこと:約 2.4 倍
  • チュートリアル動画の閲覧数が多いこと:約 2.2 倍

今回の検証により、アドヒアランス改善をサポートするツールが構築されていれば、完全リモートでも禁煙を成功できる、と結論付けています。 

 

いかに禁煙を意識づけるかがカギとなるわけですね。主役になるのは禁煙補助薬だとしても、しっかり使い続ける必要があります。こうした結果からも、禁煙補助薬の効果を最大化するために、とても有益なアプリケーションだと思います。

 

費用や使い方は?

モバイルアプリは、Google playでもApp storeでもダウンロード可能です。ただ、プログラムへの参加は、導入企業・健康保険組合を通してのみ可能となっており、招待コードが必要です。そのため、費用についても、各所属組織によって異なります。

 

診療報酬は?

 今回、モバイルアプリとして初めて保険適応が承認となりました。そのため、モバイルアプリのために用意された加算はなく、従来の報酬項目を組み合わせて用意されています。

 

診療報酬
  • ニコチン依存症管理料(初回):230 点
  • 在宅振戦等刺激装置治療指導管理料・導入期加算:140 点
  • 疼痛等管理用送信器加算:600 点 × 4

他の禁煙アプリとの違い

従来も、禁煙をサポートするアプリは多数リリースされていました。カレンダー形式になっているものや、日記帳形式のものまで様々です。

 

中には禁煙を積み重ねていけばいくほど、「〇日寿命が伸びました!」という嬉しい機能がついているものも。モチベーションを維持するにはありがたいですね。

 

ただ、従来の禁煙アプリと一番大きく違うところは、エビデンスに裏付けられているということでしょう。また、専門の資格を持った指導員から直接アドバイスをもらうことが出来るというところも画期的ですね。

 

まだ残る課題

卒煙プログラムでは、呼気に含まれるCOを測定する必要があります。しかし、電子たばこや加熱式たばこではCOが出ず、測定が難しいという課題が残されています。

 

ただ、現在では電子たばこや加熱式たばこの人気が急上昇しており、もしかしたら新しいエビデンス創出もスピーディに実施されるかもしれませんね。

 

私の考察

 このプログラムの何よりも素晴らしいと思ったことは、こまめなフォローです。生活習慣の改善はとても地味ですし、継続することが一番難しいことだと考えています。それを、1~3分という短い動画を継続的に送ることで意識づけ、自発的に習慣化する仕組みを作っていう点が見事だと感じます。

治療用アプリとその治療効果にに影響を与える自己肯定感について、別の記事にまとめておりますので、もしよろしければそちらもご覧ください!)

 

加えて、フルリモートで治療が完結しているというのも魅力的ですね。様々な技術革新により、医療アクセスが根底から見直されています。医療をもっと身近に、もっと便利に使える時代が来るのでしょう。その皮切りとなるアプリとなってくれそうですね。

 

一方で、医療費削減からも目を背けるわけにはいきません。社会保障を維持するためにも、今後は未病への介入や予防医療がますます注目されてくるはずです。なにも全く新しい取り組みが始まるということではなく、今ある身近なデバイスで健康増進が図れるようになると考えています。技術革新にあわせてデジタルヘルスも進化していきますし、常に最新の動向をチェックしておきたいですね。

 

最後までご覧いただき本当にありがとうございました。

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*1:モバイルヘルスアプリやウェアラブルデバイスに関連した国際的なジャーナル。2021年6月時点のインパクトファクターは4.31。

*2:JMIR mHealth and uHealth - Efficacy of the Ascure Smoking Cessation Program: Retrospective Study