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プライマリー領域担当MRの実態 コロナの前と後

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今日もお疲れ様です。首都圏や関西圏の主要都市では、GWを前にして緊急事態宣言が発令されそうになっていますね。いろいろなことがデジタル化、オンライン化され始めてはや1年、いわゆるニューノーマルになれ始めてきた方が多いのではないでしょうか。

今回はプライマリー領域担当としての働き方が、新型コロナウイルス感染症拡大前後でどう変わったかについて触れていきます。

 (目安:3分)

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【目次】

パンデミック前

一日の流れ

開業医担当者と病院担当者とでは細かいところは違いますが、共通して言えることは「朝はまず得意先に入ること」から始まります。開業医担当者であれば医薬品卸のデポに訪問して活動内容を共有したりという打ち合わせを実施していましたし、病院担当者も朝早くから薬剤部で説明会をされたりという業務があります。

 

その後は大体出社してからメールチェックであったり提出書類の作成に取り掛かります。お昼過ぎから夕方にかけての外勤に向けて資料を作成したり、説明会や講演会がある場合はその用意を出社してから取り掛かります。

 

月初めや週初めには会議が入ることが多く、もちろん会議室に全員が集まって実施します。製品研修なども月に1度か2度入りますが、そちらも同様です。パンデミックに関わらず働き方改革の一環として直行直帰を推進しようという流れはありましたので、内資外資問わず外勤先から自宅に直帰するケースは多かったように思います。

 

年に数回ほど、得意先行事の名目で医療機関主催の忘年会新年会やゴルフコンペに参加することも可能でした。普段はプライベートの話をする機会が少ない医師ともゆっくり話す機会になりますので、MRとしては積極的に活用したいイベントだったわけです。

 

今まで恒例行事として開いていたこうした得意先行事も、コロナ禍でゼロに。プライマリー領域担当者の切り札的存在が全くなくなってしまいました。

(中には正直しんどい得意先行事もありましたのでラッキーな部分もありますが。)

情報提供のカタチ

開業医担当者であれば、診察終了後に訪問して、世間話を交えながら最後に「○○の患者さんにはうちの薬もよろしくお願いしますね」といって退室。病院担当者も医局前や院内廊下で目当ての医師が通りがかるのを待ち、通りがかりを捕まえて最新の話題を記憶に残りやすく端的で伝える、そんな方法でした。

 

当たり前ですが直接訪問、直接面会が主流でした。むしろオンラインで面会しているというMRは当時は聞いたことがなく、一部の開発担当者が本社と遠方とをつないで実施するくらいでした。

 

実際に自社製品を使っていただいている医師から直接話してもらう講演会も、一つの会場に集まって実施していました。もしろんWeb講演会は昔からあったのですが、日本で最先端の治療をしている権威の医師が話すことよりも、地元でいつもお世話になっている医師に言われることの方が腹落ちしやすいということも少なくありません。そのため、パンデミック前のWeb講演会は一つのツールとして存在していましたが、やはりメインは医師が直接会場で話す講演会でした。

 

 

プライマリー領域担当者の大変さ

プライマリー領域の薬剤は、臨床試験のエビデンスこそ優劣がついていても、実臨床で違いを感じることは難しいです。

例えば糖尿病の薬剤の場合、「HbA1c低下効果はほぼ同等ですが大きく異なるのは血糖変動性」という製品AとBがあったとします。データを見る限りでは「Aの方がよさそうだ!」となっても、じゃあすべてAに変えるかというとなかなかそうはなりません。

 

製品Bを長い間飲み続けている薬剤ということでもあれば、患者さんは「今回もいつもと同じBだ」というだけである程度安心します。それを「薬を変えましょう」と言われたら「少し悪くなっているのかな?」と心配してしまいますよね。患者さんが服用している薬剤を変更するのにはそれなりの"大義名分"が必要なのです。

 

院内の在庫の整理という点でも手間がかかります。一般的に医薬品の包装単位は100錠からであることが多いのですが、28日分処方を繰り返しているうちに1錠2錠端数が出てしまうことがあります。院内採用品目の切り替えの際は、こうした端数をなくなく諦めなければならないため、経営にも直結してきます。それであれば従来の薬剤でいいかという話になってしまいます。

 

細かな匙加減が求められる領域で、専門病院が細かく管理する場合ならともかく、最も分かりやすい違いは「適応範囲が広いかどうか」「どのくらい安いか」ということに尽きます。適応症が増えて今まで使いたかったけど使えなかった患者さんに使えるようになった!とあれば、プライマリー領域の製品でもがらっと変わることはありますね。担当者としてはこんなに楽しい仕事はありません。

 

とはいえ、人付き合いによって薬剤を決めることが少なくない領域のため、ある意味では「訪問しているかしていないか」が売上拡大のための最も大きな要素であり、プライマリー領域ならではの大変さと思います。

パンデミック後

一日の流れ

医薬品卸への訪問が規制されたため、開業医担当者が毎朝ルーチンで行っていた卸訪問はほぼなくなりました。病院も訪問規制を敷いているところが多く、両担当者ともに朝早くから得意先に入るということは激減しています。

僕の場合はその時間を有効活用して、今まで以上に医療環境のニュースを仕入れたり、情報誌を読む時間にあてています

最近では、会社側も自己研鑽コンテンツをWebコンテンツで作成して配信するケースも増えてきており、そうした勉強の時間にあてています。

 

会社への出社も規制されているため、ほぼどこのメーカーも直行直帰が当たり前となりました。経費の精算や資材準備などでやむを得ず出社することもありますが、それも精算フローの見直しやデジタル化によって徐々に少なくなっていくでしょう。今までは月曜日の経費精算や各種会議が当たり前でしたので慌ただしかった週初め。今ではゆとりある朝を迎えております。

 

開業医の訪問可否については院長の一存ですので、会える会えないの程度は担当者ごとにばらつきはありますが、大体7割くらいの開業医は従来通り面会できるようなイメージです。

一方、病院は開業医と比べると訪問規制が厳しく、「この1年間会えていない医師がいる」という病院担当者も少なくありません。

 

講演会の数自体はそこまで激減していません。Webに置き換わったという違いはありますが、各メーカーが今まで通り開催しています。ただ、講演会終了後の情報交換会は、感染拡大防止の観点から皆無となりました。その影響もあって、講演会終了時間≒業務終了時間になっており、自由時間は増えています。

 

情報提供のカタチ

面会できる開業医に対しては、今まで通りの情報提供に戻っていることが多いです。ひざを突き合わせて「また感染広がってますね~」なんて世間話を交えながら、自社医薬品の紹介をさせてもらったり。メーカーによっては訪問を自粛するようにと強い要請をかけている会社もありますので、開業医の側も訪問してくるメーカーの減少を感じているのでしょう。パンデミック以前よりも世間話が弾むこともあります。

 

病院担当者はその点大変です。施設への訪問が厳しく規制されているので、面会と言えばオンライン面談。医師に別途時間をとってもらって会うという形になりますので、医師も「会ってやってる感」が否めません。おいそれとオンライン面談をするわけにもいきませんので、MR側も必死に用件を作ります。しかし、そんなに何度も用件が作れるはずもなく、また毎日のようにアポイントを取るのも無理な話です。今までは廊下で会ったときに10秒20秒話せていたものが、今は出来ない。会社からはシェアを上げろというお達しがやむことも無く。訪問しているか否かがある程度影響してくる製品にも関わらず、その訪問が出来ないので、同種同効薬のシェアはほぼ横ばいのまま。

 

まとめ:戻ること・戻らないこと

あらゆることがデジタル化によって変わりました。特に今までは「用はないけど訪問しよう」なんてこともありましたし、実際にそれで処方が伸びるというケースも多かったです。ただ、それで喜ばれるケースも多々あったんですよね。インターネットでいつでも欲しい情報にアクセスできるし、MRなんていらないんじゃないの?とも言われていましたが、とある医師へのアンケート結果いわく「自分の知りたいことばかり詳しくなるが、専門外の情報は調べようにも調べられないので、MRからの情報提供が役に立っていた」という記載がありました。


開業医の医師は、自分の専門領域以外の領域の情報が欲しいというニーズは一定数あるわけで、そこに応えられるMRは必要でしょう。そうした力のあるMRによる通常訪問の形は、このパンデミックが落ち着いた後にも戻ると思います。

 

今でこそWeb講演会では情報交換会を実施せずに進めていますが、地域医療をサポートするためには情報交換会が必要です。2021年内には難しいかと思いますが、時間がかかるとしてもこちらも戻していくでしょう。

 

一方で、通常訪問の絶対数は減っていくわけですから、当然移動にかかるコスト、マンパワーの削減は必至でしょう。会社側も「ここまでの営業部隊は必要だったのか?」と疑問視しているはずです。加えて、プライマリー領域製品の新発売の数は今後ますます減っていきますので、相加的に変化していくでしょう。

それでも、ただ減らせばいいというわけにもいきません。新発売の時には一時的にもマンパワーが必要になりますが、そのタイミングで採用を増やそうと思ってもなかなか即戦力にはなりません。今後はコントラクトMRの比率が上がっていくと思います

 

直行直帰の推進、営業所の廃止が少しずつ進んできました。マンパワーを減らすことのメリットとデメリットを考えた時に、メリットが上回ると判断している経営者が多いように感じます。MRとして働く中で「MR力」だけをつけていくことに大変なリスクを感じる僕なのでした。