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【談合問題】さすがに息苦しくない?医薬品卸業界に漂うギスギス感

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今日もお疲れ様です。世間を騒がせたJCHOへの入札を巡る卸談合問題。ようやく当事者の処分が決まりつつありますね。今回はそちらをテーマに、現場で感じる医薬品卸さんの息苦しさをMR目線で書いていきます。

 (目安:2分)

 

 

【目次】

談合問題

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どんな事件?

こちらの記事をご覧いただいている方は、おそらく医薬品卸4社による談合問題について、すでにご存知の方なのではないでしょうか。詳細は割愛いたしますが、独立行政法人の医療機関へどの卸から医薬品を納入するか決める入札で、談合によりあらかじめ入札会社を決め、不当な利益を得ていた疑惑がもたれている事件です。

 

当事者となっているのはアルフレッサ・スズケン・東邦薬品・メディセオの4社ですが、2021年4月になって、ようやく法的な処分が決まりだしそうな段階に入ってきました。

元幹部へ懲役刑も

メディセオを除く3社について、罰金や罰則が求められることは必至です。4月27日に、1社目となるスズケンの初公判が行われました。

 

検察側はスズケンに対し、3億円の罰金および元幹部それぞれに1年半~2年の懲役刑を求刑しています。被告人らは事件の経緯や成り行きを話していますが、幹部のみが関与する入札の会議があり、出席者は違法と知りつつも「自分の代で急に止めるわけにもいかない」「自分の代でシェアが急激に落ちるのもゴメンだ」という経緯や心情を語っています。つまるところ行き過ぎた慣習と保身ということですね。

 

MRすらも感じる息苦しさ

MS同士で「話をすること」も禁止

今回の談合問題が発覚した段階から、MS同士で直接話をすることはもちろん、電話をすることも禁止されているのだとか。さらに余計な疑惑を持たれないようにするための措置なんだそうです。今回の一件には関係のない地場卸などはその限りではありませんが、全国的にもシェアの大きい4大卸がこのようにギスギスしていますので、MRとしても変に気を遣ってしまいます。

 

実をいうと現場レベルでもある程度MSさん同士での品目の譲り合いはあったようです。例えば糖尿病の薬の売上施策をメーカーがA卸に依頼するとします。A卸MSは、「何とか今月糖尿病治療薬の売り上げ実績が欲しい!」と思うわけです。ここで、普段はこつこつMRクリニックにはB卸が納入しているのですが、A卸MSがB卸MSに「今月だけ実績貰っていいですか?」と相談を持ち掛けます。B卸MSが了承し、納入卸が一時的に変わる、という具合です。B卸も助けてほしいときはA卸に相談して、ギブアンドテイクの関係が出来上がっているんですね。

 

ただ、今はもうそれもやりづらくなっているそうです。一貫して「話をするな」「疑いを持たれるようなことをするな」という指令が下りてきているので、卸さんも疑心暗鬼というか、変に敵対心を持たれないように活動されているようです

MRは価格に関与できない

医薬品の納入価が、医療機関がどの卸から医薬品を買うかに大きく影響してきます。ただ、医薬品卸としては何でもかんでも安売りするわけにはいきませんから、納入価もギリギリのところで卸同士戦っています。MRの営業ノルマは薬価で見られることが大半なので、極端に言ってしまえばどこの卸から入っても問題はありません。しかし、処方拡大のために競合品の情報をくれたり処方元に積極的に宣伝してくれた卸さんから、出来れば納入してほしいという思いはあります。

 

ただ、納入卸を最終的に決めるのはあくまでも医療機関。かつ、独禁法の観点からMRは納入価に口を出すことが出来ません。積極的に連携してくれた医薬品卸よりも、格段に安い見積もりを出した他卸に実績が流れたとしても、文句は言えないのです。

 

談合問題を受けてMS同士での情報連携が希薄になった今、卸同士の価格競争がより激化しています。今までは製品ごとに"不可侵領域"がありましたが、ここぞとばかりに見積もりを取り直して、一番安くなるように価格交渉をするケースが増えているようです。医療機関側も、談合問題の影響で、改めて見積もりを一斉に取り出しているというケースもあるのでしょうが。

 

まとめ:卸もメーカーもジリ貧

納入価が安くなることによって卸やメーカーに対してはどのような影響が出るのでしょうか。どちらも利益率が下がるというデメリットが出てきます。卸の場合は想像しやすいですね。目先の売上が減りますので、その分利益も落ち込みます。

 

メーカーの場合も、納入価と薬価との乖離が大きくなればなるほど、2年に1回(直近では、ほぼ毎年)行われている薬価改定の際に、改定額が大きくなります。中長期的な利益が下がるというデメリットがあるので、メーカーとしても極力値下げしてほしくないのです。

 

(MRとして、営業のしやすさという観点で見ると、薬価が下がってくれた方が売りやすいというのはありますけどね。笑)

 

納入価の下がるペースが加速し、薬価改定も実質毎年行われるようになっていくことを考えると、競合品の多いプライマリー領域の薬剤の価値下落は、ますます加速していくと思われます。それに伴ってジェネリック医薬品の値下げ競争も激化してくるとなると、ジェネリック医薬品メーカーの淘汰も進んでいきそうですね。