薬価差益を解説!先発品の方が儲かるケースは?
薬価差益という言葉をご存知でしょうか。医療機関から見て、薬の仕入れ値と売値との差額のことなのですが、ジェネリック医薬品への切り替え促進が進まない理由の一つとして知られておりますので、今回はこちらを見ていきます。
- 薬価差益とは何かを知りたい人
- 薬の利益構造について興味がある人
薬価差益とは
ご覧の通り、医療機関の目線で見た時の、仕入れ値(納入価)と売値(薬価)との差額で、医療機関にとっての利益となるものが薬価差益です。
現在では、納入価は薬価に対して85%~90%前半で取引されていることが多いです。とてつもない売上高を誇っていた先発医薬品の特許が切れ、ジェネリック医薬品が20社も参入してくるようなケースですと、発売当初のみ40%(薬価から6割引き!)なんていう利益度外視の価格を提示されることもあります。
診療所では先発医薬品の方が儲かる?
先発医薬品の薬価が500円で、ジェネリック医薬品が250円だった場合を例にしています。医療機関の卸からの仕入れ値は、一般的に「値引き率」で決まりますので、ここでは共に値引き率5%で算出しています。
ご覧の通り、先発医薬品で処方した場合は1錠当たり25円の利益なのに対し、ジェネリック医薬品では12円の利益となり、その差は13円です。単純計算で、先発医薬品はジェネリック医薬品の約2倍の売上高となります。
後発医薬品使用体制加算
お詳しい方はご存知と思いますが、現在の診療報酬制度の中には、ジェネリック医薬品をたくさん使えば使うほど、診療報酬の基本料が上乗せされる仕組みになっています。
ジェネリック医薬品を、全体の何%以上使っているのかによって上乗せ額は異なります。加えて、医科向けか調剤向けかによっても、その度合いが異なるのがややこしいところです。
- 後発品置き換え率75%・80%・85%にボーダーがある
- 置き換え率が高くなればなるほど、基本料の上乗せも大きくなる
- 85%で最大の28点(280円)、75%でも15点(150円)の上乗せ
- 置き換え率40%以下の場合は、減算される
基本料への上乗せなので、基準さえ満たせばすべての患者さんに上乗せ出来ます。経営の観点から、これほど美味しいことはありませんね。一方で、置き換え率が低いと減算されるというのは、調剤向けならではの特徴です。
一方、医科向けはどうでしょうか。
- 後発品置き換え率75%・80%・85%にボーダーがある
- 置き換え率が高くなればなるほど、基本料の上乗せも大きくなる
- 85%でも5点(50円)、75%だと2点(20円)しか上乗せされない
- 減算は無い
- 処方箋の中で、一般名処方をしているかどうかがポイント
- 1品目あれば5点(50円)、2品目以上で7点(70円)の上乗せ
もちろん、これ以外にも細かい規定がありますが、大まかなところとしては以上になります。院内処方箋の場合と、院外処方箋の場合とで条件が異なります。院内の場合は、調剤向けと同様のボーダーが設定されていますが、上乗せが圧倒的に少ないということがお分かりいただけるかと思います。
このような背景から、院内で処方している診療所では、ジェネリック医薬品促進の加算を取りに行くよりも、先発医薬品を使って薬価差益を取る方が、経営的なメリットにつながるのです。
※(出典:厚生労働省 医療保険が適応される医薬品について)
置き換え率ばかりを追いすぎた結果
2020年9月末までに、後発医薬品比率80%を目指します!という政策の下始まったジェネリック切り替え促進の波。まずは「60%を目指しましょう」「達成したら70%を目指しましょう」と段階的に促進するために、今よりも高い加算がついていた時期もありました。それが、達成されてしまえば点数を少し下げ、新しい目標を立てるというやり方で、置き換え率ばかりを促進させる動きとなっています。
果たしてこれが患者利益につながっているのかというのは、正直疑問です。薬局薬剤師さんも、「ジェネリックにしませんか?」と提案することに時間も精神も割かれ、思い描いていたような患者指導が出来ないと伺います。
さらには調剤向けにおいては減算という「ペナルティ」がある一方で、医科向けにはないという格差。なんだか政治的な闇を感じてしまいます。
9月末時点では78%の置き換え率であり若干届かずでした。目標80%の達成を、2023年年度末までに修正し、再度取り組んでいます。そこで小林化工や日医工の問題。まだまだジェネリック医薬品の圧倒的普及には時間がかかりそうですね。
最後までご覧いただき本当にありがとうございました。
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