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【2020本決算】2トップが大幅減益って大丈夫?アステラス・第一三共の本決算を読む!

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今日もお疲れ様です。GWを前に、いよいよ2020年度3月期決算の発表シーズンになってきました。製薬企業としてはアステラス製薬と第一三共が27日に発表されたところです。国内メーカーとしても大きい2社の決算内容を読んでみようと思います。

(※ここでの2トップは、決算発表が最も早かった2社という意味で使っています)

 (目安:2分)

 【目次】

アステラス製薬

38.3%の減益

(億円) 2019年度 2020年度 増減 増減率
売上収益 13,008 12,495 -513 -3.9%
営業利益 2,440 1,361 -1,079 -44.9%
当期利益 1,954 1,206 -748 -38.3%

上記は2021年4月27日発表の決算短信より抜粋しています。

ご覧の通り、売上収益はほぼ横ばいですが、営業利益は前年比-44.9%、当期利益は-38.3%で着地しています。

セレコックス国内独占販売期間満了の影響

決算説明会資料によると、大幅減益の理由は以下の通りです。

  • ・COVID-19による受診控えで減収
  • ・国内独占販売期間満了の品目があることが影響
  • ・開発中止品目と、開発途上品目の資産価値見直し

受診控えは確かにそうですね。これに関しては製薬企業全体に影響があるかと思います。独占販売期間満了の影響というのも、製薬業界らしいというか。特に国内のプライマリー領域製品を扱うメーカーはこういった契約を結ぶこと、多いですよね。

 

減少要因として、セレコックスやベシケアは大きいですね。それぞれ市場でもかなり浸透しておりポテンシャルのある薬剤でしたから、売り上げへの影響も相当なものだと思います。

とてつもなく高い営業利益率を維持

2019年度ほどでないにしても、高い営業利益率を維持しています。業界の中でも屈指の高い営業利益率を誇る会社ですし、この状況下でも維持できるというのは素晴らしいですね。研究開発費も、目標としている毎年2,000億円を継続していますし、安定した経営がうかがえます。

2021年度以降は泌尿器・がん領域・Rxへ拡大

イクスタンジを中心に、泌尿器領域への注力を加速するビジョンを描いています。特にイクスタンジに関しては、2021年度には2020年度に比べて約1,000億円の売り上げ増加を目標として掲げており、会社としての屋台骨へ選択と集中をしているようですね。

 

開発ラインナップにも白血病や泌尿器系のがん領域が多く、ポストイクスタンジを見据えた製品群が盛りだくさんです。加えて、医薬品以外の領域にも積極的な投資をしており、将来的にプライマリー領域の薬剤が手薄になった時の戦略として、種をまいている時期といえると思います。

 

第一三共

41.2%の減益

(億円) 2019年度 2020年度 増減 増減率
売上収益 9,818 9,625 -193 -2.0%
営業利益 1,388 638 -750 -54.0%
当期利益 1,291 760 -531 -41.2%

上記は2021年4月27日発表の決算短信より抜粋しています。

アステラス製薬同様、こちらも売上収益はほぼ横ばいです。営業利益・当期利益も減益となっていますが、アステラス製薬と比べると、減益幅が大きいですね。

メマリー特許切れと抗インフルエンザ薬の影響

大型製品であったメマリーの特許切れと、イナビルの売上減少が大きいですね。特にインフルエンザに関して2020年度は全くと言っていいほど流行らずでした。第一三共のみならず、塩野義製薬もかなりの痛手が見込まれますね。

アステラス製薬同様、注力している中心製品(タリージェ、エンハーツ)は大幅に伸びているものの、これら特許切れや受診控えなどによるダメージはカバーしきれなかったのでしょう。

海外売り上げにも救われる形に

国内の主力品目でもあるリクシアナが、グローバルでのシェアを伸ばしています。超巨大市場である中国においても2020年末に国家医療保険リストに収載されており、当面の数字を稼ぐ主力品目として注力していくものと思われます。

2021年度以降はエンハーツのエビデンスが続々

アストラゼネカ社との巨額の提携で一時期話題になりました。国内でもすでに乳がん・胃がん領域に適応を取得しており、今後の適応拡大に向けた数々の試験が走っているようです。

 

加えて、世界各国でも承認に向けた調整が始まっており、ポストリクシアナに向けて着々と仕込んでいる様子です。

まとめ:製薬企業もコロナでアゲンスト

 製薬企業も2020年度の本決算が発表され始めました。アステラス製薬と第一三共が先陣を切りましたが、2社とも大幅減益であり今後の決算を控える企業にも、不穏な空気が流れていそうです。どこも等しくコロナ禍による受診控えで減収になっていることは間違いないかと思います。

 

ただ、肝心の中身を見る限り、個人的には全然問題ないというか、むしろ明るい印象を受けました。まず受診控えや期間満了・特許切れはしっかり織り込んでいます。そのうえで両社とも研究開発費に惜しげもなく資金を投入し、領域は違えどオンコロジー製品のラインナップ拡充に向けて着々と仕込んでいます。一時的に決算書が赤くなったとしても、必要な投資であり、中期目線では全くブレていないなという印象ですね。

 

この2社に関しては2020年度増配もしていますし、まだまだ強気です。アステラス製薬なんかは利益率もよく、もっと株価があがってもいいものと思うのですが…。第一三共はPERから見てもうしばらく入れないです。笑