10年後に製薬業界で生き残るには?薬学生とのOB訪問を通して
先日、とある薬学生からこんなことを聞かれました。「企業に就職することを考えているのですが、これからの製薬業界で生き残っていくためには、どんな素質があったらいいでしょうか?」背景にはMR不要論やリストラの話題が絶えない業界であるということもあるのかもしれませんね。
2021年に入ってからも数社の早期退職が発表されていますので、学生さんが不安に思うのも分かります。非常に難しいテーマですが、自分事としても考えないといけないことだなと気づくきっかけに。今回は、私が考える10年後の製薬業界で生き残るために必要なことをまとめていきます。
- 向こう10年間で起こる製薬業界の変化についての考察
- 製薬会社で生き残るための能力について
- 変化を先読みする力を身に付けるためには
医薬品にとっての「10年」
医薬品に関連する業界でお勤めの方にとって、「10年」という数字は特別な意味があるのではないでしょうか。そう、特許ですね。きっかり10年ではありませんが、今の日本の医薬品開発フローでは、物質特許の期間はおおよそ10年間が相場と言われています。
10年後の製薬業界ということになると、今日の新薬がちょうど特許切れを迎えてジェネリック医薬品が発売されることということになります。
2021年現在でも、続々と特許切れの医薬品がジェネリックに置き換わっています。直近ですとアジルバの特許が切れ、いよいよARBもジェネリックで染まってしまいました。
生活習慣病領域の新薬はますます減り、代わりにオンコロジー領域や希少疾病への薬剤が増えてくることが容易に予想されます。
重点領域から見る10年後
- 武田薬品:がん領域・希少遺伝子疾患・神経領域
- アステラス製薬:がん領域(免疫)・遺伝子疾患・再生医療
- 第一三共:がん領域・抗体医薬・循環器領域
- エーザイ:がん領域・神経領域・アルツハイマー
- 大塚製薬:がん領域・神経領域・循環器領域
- 中外製薬:がん領域・神経領域・ゲノム創薬
中期経営計画説明会資料より、国内の主要な内資系製薬会社とその重点領域をまとめました。驚くべきことに、どの会社もがん領域へ注力することを掲げています。そのほかにも神経領域や遺伝子疾患への注力が目立ちますね。
- ファイザー:がん領域・希少疾患・炎症免疫疾患・ワクチン
- ノバルティス:がん領域・中枢神経・循環器領域・アイケア
- MSD:がん領域・プライマリー・ワクチン
- アッヴィ:がん領域・精神疾患・自己免疫疾患・ウイルス
- J&J:がん領域・神経領域・免疫疾患・感染症
一方、外資系メーカーを見てみましょう。がん領域はどこの会社も注力していますね。内資系企業と比べると、ワクチンや感染症など、予防医療にも積極的に注力していることが伺えます。
10年後となると、生活習慣病領域の薬剤が収益の柱になっていた時代は終わり、間違いなくオンコロジー領域に貢献する高分子医薬品で戦う構図になっているでしょう。
経営戦略から見る10年後
また、各社の中期経営計画を見てみると、面白いことに気づきます。それは、医薬品以外の領域にも少しずつ事業範囲を拡大しているという点です。
例えばアステラス製薬。Rx+事業と名付けた診断や予防を含めた医療サービスを展開していくことが決定されています。フィットネスジムとも提携し、医薬品に頼らない形で生活習慣病の治療をサポートしています。生活習慣病になる前から介入していくという戦略ですね。
他にも大塚製薬は「治療用アプリ」や「デジタルヘルスソリューション」を中期経営計画の柱として掲げていますし、中外製薬もビッグデータを取り入れたAI創薬力を強化しています。
製薬会社であっても、薬以外の領域に進出しだしており、これは今後10年間で想像も出来ないほど進歩していくと思われます。
治療の主体は高分子・再生・遺伝子
アンメットメディカルニーズを満たす薬剤が順調に出てくると仮定しましょう。現在でも未だ満たされていない疾患には、アルツハイマー型認知症や慢性腎臓病、統合失調症などが知られています。
いずれも、組織レベルで慢性的に異常が起こっているものが多く、受容体をどうこうするというよりは「元に戻す」という切り口での治療が必要になってきます。
今後の医薬品の中心としては、抗体医薬品や再生医療等製品、遺伝子治療などが考えられます。
生き残るための能力
長くなってしまいましたが、前提となる製薬業界に起こり得る変化をまとめると、「医薬品の複雑化」「医薬品以外の治療ツールの普及」「予防医学への介入」であると考えます。
こうした前提に立って考えた時に、製薬業界で生き残るための能力は、「楽しく学び続けられる力」と「変化を先読みする力」だと私は考えます。
楽しく学び続けられる力
新薬がカバーする疾患領域が複雑になるにつれて、医薬品一つ一つの特性もますます高度になっていきます。加えて、がん患者さんを中心に、多数の併存疾患を抱える患者さんも増えてくるでしょう。あっちを立てればこっちが立たず、絶えずそうした選択を迫られる業界ですので、疾患や病態を深く知ったうえで最善策を導き出せる論理的思考力はますます求められてきます。
モチベーション高く、最新の知見を貪欲に取りに行ける力が重要と考えます。
変化を先読みする力
こちらに関しては、佐藤 航陽 著「未来に先回りする思考法」の受け売りではありますが、特に当てはまる業界だと肌で感じています。
こちらの書籍にも記載の内容を少しだけ紹介いたします。よく「変化に対応出来る人こそが優秀な人材だ」と言われますよね。確かに新しいテクノロジーが生み出されたり、環境変化が起こった時にそれらをうまく取り入れられるかどうかは重要な要素です。
しかし現代においては、あらゆるテクノロジーの進化が早すぎるうえ、情報の伝わる速さが格段に向上しているために、「変化に対応している間に次の変化が起きてしまう」という現象が起きています。
スマートフォンのアプリなどはまさにその類ですね。スマートフォンの通信能力やカメラの性能が向上したことによりオンライン診療アプリが一躍話題となりました。ただ、ユーザーのレビューによって初動で低評価をつけられてしまうと、一気にシェアを取られてしまうアプリも多く見受けられます。
どのように変化を先読みしていくかについて、著者は「必要性を見抜けるか」をあげています。この本を読んでから私は「このテクノロジーはこういった必要性に基づいて開発されたんだな」「社会的にはこうした必要性があるから、次に製薬業界で起こる変化はこうした方向性だろうな」と予測立てて考える能力を身に付けることが出来ました。
詳細についてはぜひお手に取って読んでみてください。ものすごく視野が広がります。
まとめ
今後10年間で起こるであろう製薬業界の変化を考え、そのうえで生き残るための能力としては「楽しく学び続けられる力」と「変化を先読みする力」であることをご紹介させていただきました。
普段は何気なくもやもや思っていた考えですが、今回OB訪問という機会を学生さんに頂いて、私自身考えをまとめることが出来ました。
OB訪問には自分が気になることを教えてもらう、という意味合いが強いと思いますが、逆に自分の業界のことを話してみることでも、刺激を貰えますね。貴重な機会を作ってくださった学生さんに感謝します。
もし読者さんの中で「新しいことに挑戦してみたいけど、少し不安があるから業界に詳しい人から話を聞いてみたい!」と思われている方がおられましたら、ぜひOB訪問をご検討されてみてはいかがでしょうか?
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【2015-2021年最新】延べ30社!製薬企業 6年間のリストラまとめ
MR不要論、過剰論が叫ばれて久しいですね。製薬企業・早期退職で複合検索すると、読みきれないほどの記事がヒットします。毎年のように早期退職、いわゆるリストラを敢行している業界ということで有名なのかもしれません。
早期退職に関する情報ニーズもそれなりにあるということなのでしょう。今回は、2015年から2021年(8月時点)までに実施された早期退職をまとめてみます。
- 製薬業界全体の早期退職の歴史を知ることが出来る
- 早期退職の対象年齢の傾向を知ることが出来る
- 人材の価値を高める方法を知ることが出来る
早期退職は6年間で延べ30社
上図には、2015年から2021年(8月)までに実施された早期退職の実施企業と人数を示しております。注釈にも記載しておりますが、MRのみを対象としたデータと管理職や研究開発職含めたデータも含まれている点、ご留意ください。
ご覧の通り、毎年のように早期退職を実施する企業があり、かつその数は増えてきている傾向にあります。複数回実施している企業もあり、延べ件数でみると実に30社にも上ります。実施企業数のピークは2019年の9社で、人数のピークは2018年の約2,600人+α(GSK非開示)となっています。
もちろん、こちらのデータには、定年退職による自然減を含んでおりませんので、業界を去った人全体で見るとさらに多くなります。1年間でこれだけの人数が減っていくというのは、強烈ですね。
"コワザ"の外資、"オオワザ"の内資
全体を通してみると、実施件数は外資系企業の方が多いようです。1件当たりの早期退職者数は内資系企業の方が多いという傾向があります。MSD、アストラゼネカ、ノバルティス、サノフィは各々の人数こそ少ないですが、この6年間に複数回実施しており、小刻みに調整していることが伺えます。
人数に関して見てみましょう。そもそもの社員数にもよるので人数の比較だけでインパクトを図ることは出来ません。社員数に対する退職者数の割合で見た時に、最もインパクトのある企業は2019年実施の鳥井薬品(280人)でしょう。後ほど触れますが、対象年齢を20代からとし、MRの約半数を退職させるという大規模なリストラを実施しています。
同様に、2020年実施の日本ケミファ(42人)も一見少なそうですが、これは当時の所属MRの約20%に当たります。2020年の塩野義製薬は、早期退職ではなくシオノギファーマへの転籍ではありますが、それでも1,000人弱という人数が塩野義製薬本体から離れています。今回の集計では、1年間で500人以上の早期退職を実施しているのは内資系企業だけ、という結果になりました。
40歳前後がボリュームゾーン
上図は、製薬企業を早期退職の対象年齢別にまとめたデータです。条件を開示している企業だけをまとめています。年齢だけで区切っている場合もあれば、ここに勤続年数の条件も含まれる企業もあるので、あくまでも年齢のデータのみとしてご覧ください。
ご覧の通り、ボリュームゾーンとしては40歳前後を対象とする企業が多いという結果でした。人件費が高くなりだす年齢層がターゲットになりやすいという傾向が伺えますね。
また、45歳以上を条件としている企業が5社あり、MSD(2017年)のように50歳以上なら退職金をさらに上乗せするという企業があることからも、いわゆるバブル入社組も標的になりやすいということでしょう。
ただMSDの例はどちらかと言えば少数かもしれません。50歳代からの早期退職では、退職金の上乗せが無い場合が多いです。理由は、今やめなくても近い将来自然退職が見込めるからですね。
対象年齢も若返りの傾向?
非開示の企業が多いので評価が難しいところではありますが、条件が分かっている会社だけで見てみますと、2015年~2018年は40歳以上を対象とすることが多いようです。
一方で、2019年~2020年を見てみますと、30歳代からが対象になっています。各社新卒採用の人数を絞っていることに加え、30歳代からも早期退職のターゲットに加えていることを踏まえると、今後も製薬企業のスリム化、特にMR数の大幅な減少は続くと考えられるでしょう。
「うちは大丈夫?」聞いてどうする
この記事をご覧になっている方は、医薬品が特許ビジネスであることをご存知の方も多いのではないでしょうか。特許があるうちは左うちわだったとしても、切れたら売り上げが大幅に下がってしまうというのが運命の業界です。この会社ならば安心!という企業はありません。
だからと言って悲観的になることは無いと考えます。これはある意味、資本主義経済の性質を考えると当然です。企業に依存するのではなく、これからは個の力をいかに高められるかどうかがポイントになっていきます。
人材としての価値を高める要素には、【経験】と【資格】が大きなものとして考えられます。また、他の参考記事もリンクを掲載いたします。
【経験】を重視すべき理由
ちなみにこれは私個人の意見ですが、経験と資格ではどちらの方が重要かという点に関して、経験だと考えます。理由は、経験そのものが生きた能力になるからです。社会生活の中では様々な理不尽やトラブルに見舞われることもあり、それらに関わるということは教科書や書籍からは学べない生きたアウトプットを習得することが出来ます。
企業が所属する社員に求めることは、「キャッシュを生み出す能力を持っているかどうか」であることは言うまでもありませんね。要するに即戦力かどうかということです。実務経験があるということは、その経験からキャッシュを生み出すための生きた能力が身についているということです。
経験を補強するための【資格】
ただし、経験は本人にしか証明できないことであり、客観性に欠けるというのが一番のデメリットです。加えて、何かを経験するためには多くの時間とエネルギーを投資しなければなりません。
資格はそのデメリットを補強するための素材であると考えます。人材としての価値の裏付けにもなりますし、他にも「有資格者である」という自信は何物にも代えがたいものです。
もし資格取得にご興味がおありでしたら、スタディングをおすすめいたします。スタディングは、スマホやタブレットでいつでも受講できますので、時間を有効活用できます。そのほか、オンラインだからこその低価格であることや、演習問題が非常に充実しているため、無理なく資格取得を目指せます。
私自身も、まずはお金に関する知識からつけようと思い、簿記とFP技能士の資格を取得させていただきました。通勤時間や寝る前の時間を有効活用できますので、ぜひご覧になってください。
■受講者の声
- Webで完結できるところが気に入っています (FP3級合格者)
- スマホさえあればいつでもどこでも、それこそトイレの中でも勉強できるのでよかった (外務員合格者)
- 特にインプット、アウトプットがとても効率よく、記憶に定着出来ました! (宅建士合格者)
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薬価差益を解説!先発品の方が儲かるケースは?
薬価差益という言葉をご存知でしょうか。医療機関から見て、薬の仕入れ値と売値との差額のことなのですが、ジェネリック医薬品への切り替え促進が進まない理由の一つとして知られておりますので、今回はこちらを見ていきます。
- 薬価差益とは何かを知りたい人
- 薬の利益構造について興味がある人
薬価差益とは
ご覧の通り、医療機関の目線で見た時の、仕入れ値(納入価)と売値(薬価)との差額で、医療機関にとっての利益となるものが薬価差益です。
現在では、納入価は薬価に対して85%~90%前半で取引されていることが多いです。とてつもない売上高を誇っていた先発医薬品の特許が切れ、ジェネリック医薬品が20社も参入してくるようなケースですと、発売当初のみ40%(薬価から6割引き!)なんていう利益度外視の価格を提示されることもあります。
診療所では先発医薬品の方が儲かる?
先発医薬品の薬価が500円で、ジェネリック医薬品が250円だった場合を例にしています。医療機関の卸からの仕入れ値は、一般的に「値引き率」で決まりますので、ここでは共に値引き率5%で算出しています。
ご覧の通り、先発医薬品で処方した場合は1錠当たり25円の利益なのに対し、ジェネリック医薬品では12円の利益となり、その差は13円です。単純計算で、先発医薬品はジェネリック医薬品の約2倍の売上高となります。
後発医薬品使用体制加算
お詳しい方はご存知と思いますが、現在の診療報酬制度の中には、ジェネリック医薬品をたくさん使えば使うほど、診療報酬の基本料が上乗せされる仕組みになっています。
ジェネリック医薬品を、全体の何%以上使っているのかによって上乗せ額は異なります。加えて、医科向けか調剤向けかによっても、その度合いが異なるのがややこしいところです。
- 後発品置き換え率75%・80%・85%にボーダーがある
- 置き換え率が高くなればなるほど、基本料の上乗せも大きくなる
- 85%で最大の28点(280円)、75%でも15点(150円)の上乗せ
- 置き換え率40%以下の場合は、減算される
基本料への上乗せなので、基準さえ満たせばすべての患者さんに上乗せ出来ます。経営の観点から、これほど美味しいことはありませんね。一方で、置き換え率が低いと減算されるというのは、調剤向けならではの特徴です。
一方、医科向けはどうでしょうか。
- 後発品置き換え率75%・80%・85%にボーダーがある
- 置き換え率が高くなればなるほど、基本料の上乗せも大きくなる
- 85%でも5点(50円)、75%だと2点(20円)しか上乗せされない
- 減算は無い
- 処方箋の中で、一般名処方をしているかどうかがポイント
- 1品目あれば5点(50円)、2品目以上で7点(70円)の上乗せ
もちろん、これ以外にも細かい規定がありますが、大まかなところとしては以上になります。院内処方箋の場合と、院外処方箋の場合とで条件が異なります。院内の場合は、調剤向けと同様のボーダーが設定されていますが、上乗せが圧倒的に少ないということがお分かりいただけるかと思います。
このような背景から、院内で処方している診療所では、ジェネリック医薬品促進の加算を取りに行くよりも、先発医薬品を使って薬価差益を取る方が、経営的なメリットにつながるのです。
※(出典:厚生労働省 医療保険が適応される医薬品について)
置き換え率ばかりを追いすぎた結果
2020年9月末までに、後発医薬品比率80%を目指します!という政策の下始まったジェネリック切り替え促進の波。まずは「60%を目指しましょう」「達成したら70%を目指しましょう」と段階的に促進するために、今よりも高い加算がついていた時期もありました。それが、達成されてしまえば点数を少し下げ、新しい目標を立てるというやり方で、置き換え率ばかりを促進させる動きとなっています。
果たしてこれが患者利益につながっているのかというのは、正直疑問です。薬局薬剤師さんも、「ジェネリックにしませんか?」と提案することに時間も精神も割かれ、思い描いていたような患者指導が出来ないと伺います。
さらには調剤向けにおいては減算という「ペナルティ」がある一方で、医科向けにはないという格差。なんだか政治的な闇を感じてしまいます。
9月末時点では78%の置き換え率であり若干届かずでした。目標80%の達成を、2023年年度末までに修正し、再度取り組んでいます。そこで小林化工や日医工の問題。まだまだジェネリック医薬品の圧倒的普及には時間がかかりそうですね。
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赤字でも利益が出る医薬品ビジネスの特殊性 国が目をつける1次売差マイナスとは?
医薬品卸による談合問題も、公判が進みつつあります。世間からの風あたりも強くなる中、医薬品流通と利益構造がクローズアップされてきました。今回は、1次売差や適性流通ガイドラインの話題に触れながら、医薬品ビジネスの特殊性と今後の展望を考えてみます。
- 医療業界で働いている人
- 医薬品ビジネス、特にMR・MSに興味のある人
- これから医療業界で働きたいと考えている人
1次売差マイナスを是正しろ、と国
1次売差マイナスとは?
医薬品の物流は、まずメーカーから医薬品卸へ出荷され、卸は医療機関に納品し、最終的に医療機関から患者さんの手元へ渡ります。そのため、各ポイントを通過するたびに利益が発生するのですが、医薬品卸の目線から見ると、「メーカーから買った額よりも高く医療機関に卸せば利益」となり、これが1次売差と呼ばれます。
上図のように、本来であれば買値よりも売値の方が高いはずで、逆転してしまうと売れば売るだけ赤字になります。
しかし、医薬品ビジネスにおいては売値の方が安い、「一次売差マイナス」という現象が日常的に起こっており、問題となっています。
医薬品卸の利益構造
では、医薬品卸はどのように利益を上げているのでしょうか。メーカーは卸に対して「たくさん売ってくれたら報奨を払うよ!」というキャンペーンを打ちます。卸はそのキャンペーンから得られる報奨によって、1次売差マイナスを補っているのです。
例えば、「新規採用施設を増やしたら、その施設の数×5,000円の報奨」というキャンペーンであったり、「医療機関でパンフレットを配ってくれたら、施設の数×200円」というものであったり、様々です。
他の業種から見ると特殊な利益構造ですね。キャンペーンの報奨には、売れたか売れないかに関わらず活動したか否かで発生するものもあるので、利益率1%と言われる医薬品卸からすると、濡れ手に粟ということです。
国が問題視する理由
登場人物が皆いい形で利益を出しているんだからいいじゃないかと思ってしまいそうですが、どうやら国はそう思っていないようです。
何が問題になるかというと、まさに今回の談合問題のように、適正な市場原理が働かなくなるという点です。メーカーからの報奨によりなんとか利益を確保しているとはいえ、買値よりも安い価格で売り続けることは不可能です。1円でも、0.1%でも売上を確保したいと思うようになるのは当然です。こうした背景が慢性的に積み重なってくると、同業同士で”価格の調整”をせざるを得ない状況になってしまいます。
談合問題については別の記事に書いておりますので、もしよろしければそちらもご覧ください。
経営苦しいから安くしろ、と医療機関
薬剤購入費
病院と薬局とでは利益構造が違いますし、薬局の中でもドラッグストア併設でOTCを大量に扱っていたり個人薬局で専門性に特化したりでは背景が異なりますので一概には言えませんが、薬剤購入費は大体3割ほどを占めています。
本当は人件費下げたいけど
人件費に次いで大きなウエイトを占める支出ですから、経営の見直しの際には真っ先にメスが入ります。調剤報酬改定や「薬局多すぎ問題」のあおりを受けて、毎年のように経営が厳しくなっている現状があります。
経営者の本音としては、人件費を下げたいというのがありますね。「薬局 経営 コンサル」あたりで検索すると、大体人件費のやりくりについての記事が出てきます。
とはいっても簡単には下げられないもの。どうしても薬剤購入費を少しでも安くするようにという形になってしまうんですね。
適性流通ガイドライン
適性流通ガイドラインとは?
平成30年に厚生労働省から出された、医薬品の物流の質向上を目的としたガイドラインです。対象は、医薬品卸だけでなくメーカーや医療機関も含まれています。簡単に書くと、こんな感じです。
- メーカーには「卸への売値を安く!報奨は適度に!」
- 卸には「医薬品の安定供給を大事に!」
- 医療機関には「卸に対して不当に安い価格を要求しないこと!」
本音「たかがガイドライン」
このガイドラインが出される直前、業界内でも「この特殊な収益モデルも改善されるな~」なんて空気が漂っていました。実際、割引を見返りに大量に購入する医療機関も減り、医薬品の偏在や無駄な物流は激減しました。
一方で、価格に関してはやはり報奨ありきの風習が残っているのが正直なところです。一部外資系メーカーでは、流通卸を絞り、報奨の適正化を図る動きもありましたが、なかなか追随していないのが現状です。
まとめ:求められるモデルチェンジ
価格に関しては、現状でもすでに正直3者ともカツカツな状況です。しかし、今回の談合問題を受けて、価格への見る目はますます厳しくなると思われます。
メーカーとしても報奨ありきで仕切価を高く設定することは減っていくでしょうし、医薬品卸もその分価格を下げられなくなるでしょう。医療機関も、薬剤購入費が高くなり、支出を抑える効果は弱くなっていく気がします。
いちMRとして今後必要だと思うことは、自販力だと考えます。従来のように卸MSに協力してもらいながら広めていく人海戦術ではなく、最小限の労力で売り上げを最大化する力、またそのマーケティング力や学術的知識が求められていくのではないでしょうか。
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堀江貴文さんが語る糖尿病の怖さ。苦しむのは自分。
Youtubeで配信されているAbema Primeをご存知でしょうか。世間でHOTな話題に個性的なコメンテーターが切り込むテレビ朝日系報道番組です。
非常に勉強になることも多いので、私もよく拝見しています。先日、ゲストに堀江貴文さん招いて糖尿病をテーマに放送されていました。一応業界人として共感出来る所や自分なりに考えるところがありましたので、シェアさせて頂きます。
糖尿病に関する放送について
概要
2021年5月13日に、実業家 堀江貴文氏をゲストとして放送されていました。テーマは「堀江貴文が伝えたい”サイレントキラー”糖尿病しられざる怖さ」でした。ダイジェスト版もyoutubeにアップロードされていますので、もしよろしければご覧ください。
www.youtube.com
放送の中で堀江さんはこのように仰っています。
- 医療機関や製薬会社は、不安を煽るような情報を開示したがらない
- 糖尿病が悪化して足を切断することは普通に起こり得るという情報が少ない
- 糖尿病に限らず、予防で防げるものを予防しないことは損である
- 予防に取り組むと医療費負担が軽くなるインセンティブを、国が作るべき
本や映画で啓発するワケ
糖尿病の啓発活動として本を書いていたり、映画を作成されていたりします。堀江さんご自身が、糖尿病に対して恐怖を感じているという風に感じますね。数多く取材もされているだけあって、糖尿病の怖さの伝え方が非常に上手です。医療業界で働いている私も、正直なるほど!と思ってしまいました。笑
堀江さん率いるチームでは、予防医学に注目しているそうです。糖尿病のほかにピロリ菌もテーマにしており、手広くやられています。(以下に参考図書)
パチンコ屋で啓発動画?
糖尿病という疾患の特性上、自分が罹患しているということになかなか気付けません。そのため、疾患に対する理解が足りず、気づいたときには手遅れということも少なくありませんね。
議論の中で、「食事が不摂生な人はパチンコ屋にも多いから、パチンコ屋に糖尿病疾患啓発の動画を流す仕組みを作ったらどうか」という話が上がっていました。まずは情報を広めるという意味では面白いなと思いましたが、糖尿病になる人の背景として根本的に考えなければならない点が抜けてしまっているなと感じました。この点については後程私の意見としてまとめます。
若新さんのコメント
Abema Primeでおなじみの若新さん(金髪の男性)のコメントがすごくクリティカルだと感じましたので、私のメモとしても残します。
- 「楽して稼げる」よりも「身体を壊さない」こそ飛びつくべき情報
- 自分の健康に気を遣わないことは、回りまわって社会の迷惑になる
- よっぽどの刺激がないと情報を取りに行かない。最後の刺激は恐怖
私の意見
糖尿病が減らない理由
所得格差
放送の中でパチンコ屋に通うお客さんの食生活が話題に出ておりました。確かに、パチンコ屋に通う人の中には予備軍を含めて糖尿病の人は多いかもしれません。
ただ、根本的な理由の一つに所得格差があると私は考えます。自分の健康に時間やお金を使うほどの余裕がないことが原因で、生活習慣病になってしまうケースが多いのではないでしょうか。生活苦を解消するため、可能な限り労働時間を確保しなければいけない人に対し「早寝早起きで野菜をもっと摂りましょう」と言っても、響きませんよね。
実際に医療現場で医師と話していても、所得の低い人の生活習慣改善には苦労するという反響がものすごく多いです。社会構造の話なので一朝一夕にはどうにもなりませんが、根本的かつ重要な問題として考えています。
情報不足
糖尿病が悪化したらどうなるの?という情報が知れ渡っていないというのも、やはり理由のひとつですね。若新さんもコメントされている通り、恐怖を感じないから情報を取りに行かないというのがボトルネックと思います。
「医療機関や製薬会社は恐怖をあおることで儲けていると思われたくない」から情報を開示したがらないと、堀江さんが仰っていますが、こちらについては少しギャップを感じました。製薬会社としては、疾患啓発活動は出来る限り実施しています。メジャーなものはポスターです。病院や薬局でよく貼ってあると思います。
薬機法と業界ルールにより、製薬会社が可能な情報提供の範囲がどんどん狭くなってきています。市民公開講座すらまともに出来ないという状況です。医療業界には一般的なコマーシャルのルールが適応されないのですが、堀江さんのような医療業界に属さない方々とはその辺の認識のギャップがあるのかもしれませんね。
心理的なサポート
糖尿病治療で最も大事なところは、いかに治療を続けるかです。その心理的なサポートが、最も地味だけれども最も大事なポイントです。放送ではその辺が少し抜けていたように感じます。1ヵ月2か月食事や運動をしたからと言って治るものではありませんし、体調も特に変わりません。最初こそ積極的に生活習慣改善に取り組んでいたとしても、時間の経過によって「糖尿病の怖さ」が薄れていってしまいます。
治療法が増えてきたり、サポートアプリが登場してきたりと、技術はどんどん進化しています。今後は単発単発のコンテンツではなく、「生活習慣の改善って、楽しい!」と思えるような仕組みが必要になってくると感じます。
- 健康に時間とお金を使えないという構造的な問題
- 予防医療に積極的な人は医療費負担を減らすという仕組みには賛成
- 糖尿病の治療や悪化した場合などの情報をもっと発信していくべき
- 「生活習慣改善は、楽しい」と思えるような仕組みが必要
まとめ
医療費負担
社会保障費がますます膨れ上がっていくと言われて久しいですね。現行の医療保険制度がそのままだった場合では、いずれ限界が来ます。75歳以上の窓口負担を2割へ引き下げ、という動きも出ていますし、10年後20年後は全く違うシステムになっていてもおかしくはありませんね。
今後は予防医療のニーズがますます増えてくると見ています。自分の健康には自分で責任を持つという時代が来るのではないでしょうか。
私が取り組みたいこと
少し脱線しますが、今私は将来的に自作のソフトウェアやアプリケーションを作ってみたいという思いから、プログラミングの勉強をしております。薬学部を出ており、製薬会社として医療の場に携わってきました。もし自分が何かオリジナルで作れるとしたら、それは医療貢献につながるものでありたいと考えています。
まだまだひよっ子もひよっ子で、何も成し遂げられてはいませんが、志高くこつこつ精進していきたいですね!もしプログラミングにご興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ一緒に頑張りましょう(^^)
最後までご覧いただき本当にありがとうございました。
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【談合問題】さすがに息苦しくない?医薬品卸業界に漂うギスギス感
今日もお疲れ様です。世間を騒がせたJCHOへの入札を巡る卸談合問題。ようやく当事者の処分が決まりつつありますね。今回はそちらをテーマに、現場で感じる医薬品卸さんの息苦しさをMR目線で書いていきます。
(目安:2分)
続きを読む
【2020本決算】2トップが大幅減益って大丈夫?アステラス・第一三共の本決算を読む!
今日もお疲れ様です。GWを前に、いよいよ2020年度3月期決算の発表シーズンになってきました。製薬企業としてはアステラス製薬と第一三共が27日に発表されたところです。国内メーカーとしても大きい2社の決算内容を読んでみようと思います。
(※ここでの2トップは、決算発表が最も早かった2社という意味で使っています)
(目安:2分)
【目次】
アステラス製薬
38.3%の減益
(億円) | 2019年度 | 2020年度 | 増減 | 増減率 |
---|---|---|---|---|
売上収益 | 13,008 | 12,495 | -513 | -3.9% |
営業利益 | 2,440 | 1,361 | -1,079 | -44.9% |
当期利益 | 1,954 | 1,206 | -748 | -38.3% |
上記は2021年4月27日発表の決算短信より抜粋しています。
ご覧の通り、売上収益はほぼ横ばいですが、営業利益は前年比-44.9%、当期利益は-38.3%で着地しています。
セレコックス国内独占販売期間満了の影響
決算説明会資料によると、大幅減益の理由は以下の通りです。
- ・COVID-19による受診控えで減収
- ・国内独占販売期間満了の品目があることが影響
- ・開発中止品目と、開発途上品目の資産価値見直し
受診控えは確かにそうですね。これに関しては製薬企業全体に影響があるかと思います。独占販売期間満了の影響というのも、製薬業界らしいというか。特に国内のプライマリー領域製品を扱うメーカーはこういった契約を結ぶこと、多いですよね。
減少要因として、セレコックスやベシケアは大きいですね。それぞれ市場でもかなり浸透しておりポテンシャルのある薬剤でしたから、売り上げへの影響も相当なものだと思います。
とてつもなく高い営業利益率を維持
2019年度ほどでないにしても、高い営業利益率を維持しています。業界の中でも屈指の高い営業利益率を誇る会社ですし、この状況下でも維持できるというのは素晴らしいですね。研究開発費も、目標としている毎年2,000億円を継続していますし、安定した経営がうかがえます。
2021年度以降は泌尿器・がん領域・Rxへ拡大
イクスタンジを中心に、泌尿器領域への注力を加速するビジョンを描いています。特にイクスタンジに関しては、2021年度には2020年度に比べて約1,000億円の売り上げ増加を目標として掲げており、会社としての屋台骨へ選択と集中をしているようですね。
開発ラインナップにも白血病や泌尿器系のがん領域が多く、ポストイクスタンジを見据えた製品群が盛りだくさんです。加えて、医薬品以外の領域にも積極的な投資をしており、将来的にプライマリー領域の薬剤が手薄になった時の戦略として、種をまいている時期といえると思います。
第一三共
41.2%の減益
(億円) | 2019年度 | 2020年度 | 増減 | 増減率 |
---|---|---|---|---|
売上収益 | 9,818 | 9,625 | -193 | -2.0% |
営業利益 | 1,388 | 638 | -750 | -54.0% |
当期利益 | 1,291 | 760 | -531 | -41.2% |
上記は2021年4月27日発表の決算短信より抜粋しています。
アステラス製薬同様、こちらも売上収益はほぼ横ばいです。営業利益・当期利益も減益となっていますが、アステラス製薬と比べると、減益幅が大きいですね。
メマリー特許切れと抗インフルエンザ薬の影響
大型製品であったメマリーの特許切れと、イナビルの売上減少が大きいですね。特にインフルエンザに関して2020年度は全くと言っていいほど流行らずでした。第一三共のみならず、塩野義製薬もかなりの痛手が見込まれますね。
アステラス製薬同様、注力している中心製品(タリージェ、エンハーツ)は大幅に伸びているものの、これら特許切れや受診控えなどによるダメージはカバーしきれなかったのでしょう。
海外売り上げにも救われる形に
国内の主力品目でもあるリクシアナが、グローバルでのシェアを伸ばしています。超巨大市場である中国においても2020年末に国家医療保険リストに収載されており、当面の数字を稼ぐ主力品目として注力していくものと思われます。
2021年度以降はエンハーツのエビデンスが続々
アストラゼネカ社との巨額の提携で一時期話題になりました。国内でもすでに乳がん・胃がん領域に適応を取得しており、今後の適応拡大に向けた数々の試験が走っているようです。
加えて、世界各国でも承認に向けた調整が始まっており、ポストリクシアナに向けて着々と仕込んでいる様子です。
まとめ:製薬企業もコロナでアゲンスト
製薬企業も2020年度の本決算が発表され始めました。アステラス製薬と第一三共が先陣を切りましたが、2社とも大幅減益であり今後の決算を控える企業にも、不穏な空気が流れていそうです。どこも等しくコロナ禍による受診控えで減収になっていることは間違いないかと思います。
ただ、肝心の中身を見る限り、個人的には全然問題ないというか、むしろ明るい印象を受けました。まず受診控えや期間満了・特許切れはしっかり織り込んでいます。そのうえで両社とも研究開発費に惜しげもなく資金を投入し、領域は違えどオンコロジー製品のラインナップ拡充に向けて着々と仕込んでいます。一時的に決算書が赤くなったとしても、必要な投資であり、中期目線では全くブレていないなという印象ですね。
この2社に関しては2020年度増配もしていますし、まだまだ強気です。アステラス製薬なんかは利益率もよく、もっと株価があがってもいいものと思うのですが…。第一三共はPERから見てもうしばらく入れないです。笑
【MRのノルマ】グラクソ・スミスクラインのMR評価体系変更から5年、業界はどう変わった?
お疲れ様です。昨年度の営業成績、
(目安:2分)
【目次】
MRのノルマって?
薬価金額(合算)
医薬品の流れは、製薬会社→医薬品卸→医療機関→患者となります。それぞれを通過するときにマージンを乗せながら、最終的に薬価(国によって決められた末端価格)で患者さんの手に渡ります。もちろん、窓口負担は1~3割となります。
MRの営業成績の評価は、多くの場合薬価で見られます。つまり、医師がどれだけ処方をしたか、何人の患者さんの手に渡ったかが評価されるわけです。
もともとMRは医療機関と価格の交渉をしません。医療機関に医薬品を納入している医薬品卸との交渉になりますので、納入価(医薬品卸から医療機関へ納入される時の価格)は人によってまちまちです。そういった部分を評価に盛り込んでしまうと、さすがに不公平になってしまいます。
自分が担当する製品をトータルで見た時の売上目標金額が、
薬価金額(製品別)
トータルではなく品目ごとに評価するケースもありますが、
グラクソ・スミスクラインがノルマを撤廃して
経緯
2015年初め、グラクソ・スミスクラインがついにMRの評価体系にメスを入れました。売り上げ目標を撤廃し、真の意味で医療貢献につなげていきましょうという大改革。当時僕はまだぎりぎりMRではありませんでしたが、就職活動をするにあたってそのあたりのアンテナは張っていました。ある意味、今よりも業界を俯瞰できる立場だったかもしれませんね。笑
ただ、直近ではその売り上げ目標撤廃を取り下げて、またノルマありきの評価体系に逆戻りしています。売り上げ目標がない営業職って、ある意味社会主義の農民みたいですよね。かつて社会主義国家が衰退していった原因の一つにも農業があるように。「頑張っても報酬変わらないんだから、頑張らなくていいや。台風とか獣害あってもそのままでー」なんていう形で、慢性的なモチベーションの低下につながる可能性はありますよね。
不公平感は少なるかもしれませんが、優秀なMRの意欲を刺激できるかというと微妙なところがあると思います。
個人的には期待していた
いわゆるノルマがなくなるっていう話、実はものすごく期待していました。初めて聞いたのは学生のころでしたが、学生からしたら「ノルマ」という言葉って恐怖の対象でしたし、それを気にしなくていいなんてすごく働きやすそうだ、なんて思いましたね。また、MRの泥臭さを知らない学生だったからこそ思い描いていた理想象ですが、医師と対等に治療法についてディスカッションしたいなんて思っていました。今思えばおこがましい限りですが、それでも薬を売ることありきでなく医師と薬について話せることに憧れていたのは事実ですね。
結局なにも変わらなかった
気付いてみたらもう5年以上たっていましたが、ふたを開けたらまたノルマ制で横並び。まあ営業職なのでさすがに営業成績気にしなくていいっていうのじゃ組織が上手く回らないということに経営陣も気づいたのでしょう。
現場では「売り上げ目標がなくなっても、評価指標が他のものに切り替わっただけ。例えば前同比が評価指標になるから、今期あんまり頑張りすぎても来期しんどくなるからほどほどでやめる」なんていうリアルな声もありました。
まとめ:ノルマはあるけど詰めなくなってwin-win
腐っても営業ですから、そりゃあノルマがあって当たり前ですよね。外資系企業とはいえ、国内でも業界では名の知れた大きい会社がとった改革ですから、業界全体としてそういう方向になればいいなあなんて淡い期待をしていました。結果としては、残念でしたが。
ただ、ノルマと違うところですが、「詰め」がなくなったのは本当に大きいですね。当局からの適性流通ガイドラインが出てから、売り上げ実績の前倒しで医療機関に買ってもらうことは激減しました。「まとめて買うんだから少し値引きして」と価格交渉出来ていた医療機関からしたら少し残念なのかもしれませんが、泥臭い営業仕事が減りMRとしてはハッピーですし、安売りする必要がなくなった医薬品卸さんも同じかと思います。
論点が少しずれてしまいましたが、今回は営業ノルマ撤廃に打って出たグラクソスミスクラインの話をしてみました。まだまだ処方量を追いかける売り上げ至上主義は続きそうです。
【動機×手段×正当化】三重大学病院「オノアクト事件」とMRの心理
今日もお疲れ様です。先日の日刊薬業に、アステラス製薬が医学研究に対する寄附金を取りやめて1年が経ちましたという記事が掲載されていました。製薬企業をめぐるマネーには闇が深いだなんて言われることもありますが、本日は寄付金がらみで三重大学病院元教授への寄付金問題についてMRの目線で考えてみたいと思います。
(目安:3分)
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「ジェネリック医薬品を推す薬局さんの大変さ」を語る 第2回:"粗悪"なジェネリックとは?
今日もお疲れ様です。前回に引き続き、ジェネリック医薬品と薬局さんを取り巻く環境について、書いていきます。今回はジェネリック医薬品の価格設定にフォーカスしていきます。
前回の記事も、もしよければご覧ください。
(目安:2分)
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